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  • miki

シンガポールの音楽事情について


週末にYong Siew Toh Conservatory にて6th SINGAPORE PERFORMERS’ FESTIVAL & CHAMBER MUSIC COMPETITION 2016、という音楽フェスティヴァルがあり、演奏者によるガラコンサートに行ってまいりました。

4月よりSMTASingapore Music Teacher's Associationのメンバーとしてコミッティーの方よりご承認いただき、プレジデントのJulie Tan氏とお話しさせていただく機会をいただきました。

また、Julie氏よりSecretalyのGillian Hu氏をご紹介いただき、シンガポールの音楽事情についても詳しく伺うことができました。

Gillian氏もアメリカで長年勉強されており、私もアメリカの大学院留学経験がある事から、お互いの共通の思い出話に花が咲き、楽しいひと時を過ごさせていただきました。

フェスティヴァルにはインドネシア、オーストラリアなど各国から演奏者が参加されていて、大変国際色豊かでした!

ガラコンサートは年齢層もまちまちでしたが、年齢の小さい方も表現力が大変豊かで、日本のコンサートの雰囲気とは異なる点も多く興味深かったです。

アメリカや日本にいた時には馴染みのなかった演奏曲目も多く、中国人作曲家Yu Shi Wangによる"Sunflower"という曲はところごころに民族的なメロディが散りばめられ印象に残る素敵な曲でした。

今回のフェスティヴァルでは通常のコンクールとは異なり、ただただ点数を競い合うだけでなく、より広い視点から音楽を楽しむというコンセプトのもと、Julie氏、またGillian氏のご意見、音楽に対する感じ方と私自身も一致する点が多く、フェスティヴァルを通し、音楽に対する共通の温かい意識が根底に流れており、全体としてとても心地の良い時間でした。

こちらシンガポールではローカルの子供さんがピアノを習う場合、大方、ABRSMというイギリスの音楽検定による指導法、グレード取得を目指す指導法を希望される方が多いです。

シンガポールでは、仮に例えば子供さん自身が本当に音楽が好きで音楽の道に進みたかったり、親御さんの希望があったり、などの場合にはアメリカへ留学される方が多いようです。

私もロサンゼルスの大学院(カリフォルニア芸術大学)に留学していた時、同期にシンガポールからアメリカに移住したピアニストの友人(Clare Yao)がいるのですが、彼女は、ジュリアードの学士過程でクラシックを、その後さらに現代音楽を学ぶために、カリフォルニア芸術大学の大学院過程に進学しました。

より高度なスキルを身につけるためにはシンガポールの音楽学校では難しい、と判断し、高校生の時に家族とともに一家でニューヨークに移住したそうです。

フェスティヴァルの演奏を聴きながら、彼女と話したことを懐かしく思い出しました。

日本と同様、また日本を上回る以上の学歴社会のシンガポールでは止む負えない事情かとも思いますが、なかなか忙しい勉強の傍ら芸術に勤しむ時間的な余裕はないようで、仮にピアノを習った場合には、将来的に進学の際などに評価として有利になりうるグレード取得などに重きをおいているように感じます。

ですので、大概の子供さんは進学と同時、もしくは目標となるグレード取得とともに長年積み重ねた習い事でもすっぱりやめてしまうケースが多いようです。

情操教育、芸術に親しむ、というよりは”目に見える形”での評価を望まれる親御さんが多いことも印象としてあります。

これは日本のピアノにおける習い事事情とも重なる部分があり、シンガポール特有の事情ではありませんが、、、

フェスティヴァルで演奏した子供さん方がこの先5年後10年後にピアノを続けているかはわかりませんが、個人的な思いとして、~歳まで習ったらお終い、グレード~級が取得できたらピアノを辞める、というのはせっかく長く続けてきた中であまりにも寂しく感じます。

"ピアノは子供の時に習っていたけれど大人になった今ではすっかり忘れてしまった"、また、"子供時代にあまりピアノのレッスンによい思い出がない、子供にはぜひ楽しいレッスンを!"、、とはレッスンを行う上で親御さんからよく頂く言葉です。

私自身も子供時代はどちらかというと厳しい練習やレッスンが好きではなく、アメリカに単身で渡り、様々な音楽に対するアプローチを学んだ中で、本当の意味での音楽を楽しむ姿勢を学べたように感じています。

せめて子供の時に習ったものを忘れる事なく大人になっても何かの折に演奏できるくらい、決して日々の生活は楽しいことばかりではないですが、悲しいとき大変な時にでも、ピアノを弾いてリラックスできたり気分転換になったり、、、

詰め込み式の練習だけではなく、気持ちに寄り添える音楽の在り方を、レッスンを通して私自身もお伝えしていけるように、日々頭に置きながらご一緒に歩んでまいりたいと思っています。

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